鎌ヶ谷の家①

「伝統的入母屋造り丸桁の家を建てたい」と遠方より訪ねてくれた施主。
初めてこちらの現場を案内していただいたのは昨年の6月の事でした。

その間、設計プランから予算に至るまで、あらゆる細かな面においても
施主の納得のいくよう充分に打ち合わせを重ねてやってきました。

1年越しの計画、基礎工事着工となりました。

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待ちわびた新築工事着工にこの日は施主も現場で立会い、
鎮物をご自身の手で地中に収められました。
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「八街の家」訪問

NIIZEKI STUDIO新関謙一郎さんが設計した『八街の家』

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ご主人から頂く電話の第一声はいつもの「しゃちょ~」と上がり調子の明るい声。
だいぶご無沙汰をしておりましたが、お会いすれば相変わらずの笑顔に心が和みます。

TV番組渡辺篤史さんの『建もの探訪』、現在でも長寿番組として放送されていますが、「八街の家」放送回での事。
番組最後「この住宅を設計した建築家は当時32歳だったそうです。若い才能の息吹を感じました」と締めくくった渡辺篤史さん。
感涙されていた姿がとても印象的に残っています。

その後、私もご縁あってこちらの住宅にお伺いさせて頂く事となり、渡辺篤史さんに共感する事となります。

外観は大きさの異なる黒い箱を連結させ地面の上に置いた様、一転して内は白を基調とした誂え、自然光も降り注ぎ、不思議空間。
お邪魔する度に感動はつきません。
設計者・新関謙一郎さんがこの住宅に傾けた思い・情熱を今でも感じとる事ができます。

 

 

 

 

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鶴舞の家①

2月の上棟後、現在は木工事を終えた所です。

ここの時点でブログアップとは反省する点もあるかと、、、以後遅れる事無く報告ができるよう努めたいと思います。

さて、この日の施主との打ち合わせ内容は、電気コンセント/スイッチ箇所の最終確認および玄関廻り外壁材の色合わせです。
あらかじめ、左官職人に配合を変えた仕上がり3パターンをサンプルで用意してもらいました。

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当初、施主の考えは白でお願いしたいという事でありましたが、黒の外壁との繋がりが絶たれてしまう事からこちらでサンプルを用意して選んで頂くというかたちとなりました。

そこで決定したのは色の濃い一番左。
サンプルも乾かないうちから、我が家のネコが足跡を付けまわし一押ししていたものでした。
足跡の数からすると一番右は話にもならなかったようです。038

 

木工事を完了した内部の様子。
こちらの住宅は車いす仕様となっており、一般的な住宅より間口が広く設けられています。
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屋外へと繋がりを持たせるデッキも檜材で完成。
この庭には芝生を張る予定でゴルフ好きの施主のアプローチ練習場となります。
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古い住宅を解体するときには何か新しい住宅にも使えるものはないかとお宝を探すつもりで目を光らせますが、必ずしも、あれもこれもというような事にはいきません。
想いは十分に理解できますが、ダメなものは使えませんと正直にお伝えさせて頂きます。
お宝発見!その甲斐あって、施主に床柱の再利用を相談させてもらった所ぜひという返事で、今回はお母様の部屋ある仏壇脇に取り付けることとなりました。
解体した家屋から取り出した床柱を製材所へ持ち込み、今度は新たな住宅用柱の寸法に合わせての加工が必要となります。

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 こうした経緯で以前の家の床柱が新たに仏壇脇の柱として収められました。

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「親父が建てた家を壊すことになったけれど、またこうして母の部屋で使ってもらって亡くなった親父も喜んでくれていると思う」と話してくれた施主である息子さん。たいへん喜んでおられる姿にこちらもまた嬉しくなります。

 

 

 

 

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建物探訪

千葉県匝瑳市、飯高檀林跡にあります飯高寺(はんこうじ)へ行って来ました。

少々急な石段を上った先には総門
敷地内の木々で造られたのでしょうか、立派な材でこしらえた山門です。

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111山門をくぐった先にはスギの巨木が天を突く勢いで生い茂っています。
山道にはボコボコと巨木スギの根が張り出しており、根を踏まないようにと足元を気にしながら前へ。
086103一体が苔むすとまではいきませんが、所々に杉苔を見つける事ができます。
089山道を道なりに進みますと、いよいよ正面に見えてきました。
025飯高寺の講堂です。
小学校の頃、木造の体育館を講堂と呼んでいたのを思い出しました。
こちらも学僧の学び舎ですから。

たまたま見ていたNHK朝ドラ「とと姉ちゃん」でこの御堂を目にした時は心揺さぶられるものがありました。
と云いますのも、私にとりまして『幻の御堂』とこの『飯高寺の講堂』が重なり合った瞬間でもあったからです。『幻の御堂』とは数年前に私どもが提案させて頂いた設計プランですが、あの場所にあの御堂が建つ事となっていたならば、おそらくこの様な感じではなかっただろか、、、という思いからでした。

何処にあるのかと調べれば、千葉県匝瑳市。
地元・千葉県にこんな所があったのかと驚きでした。

115044さて、講堂は華美な装飾は一切なく、素朴さ、息をのむ程の大らかな構え。
一見すると檜皮葺きか何か、と思い後々調べてみるとトチ葺きとの事でした。
この屋根材にも興味が湧いてきますが、一枚一枚の板を竹釘で仕上げていく作業、この屋根の大きさからしてどの程度の人工が掛かったのだろうか、と古に思いを馳せる一方で現実的な疑問も湧いてきます。
蓑甲部分の曲線が何とも美しく仕上がっている事に感心させられます。
また苔が屋根材の表面をうっすらと緑に染め始め、講堂とこの地の自然とが共存している様です。
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この地で学んだ古の学僧たちが、各地へ散り優秀な僧侶となったのだろうと思いを馳せながら、あちらこちらと散策し気が付けばおおよそ2時間が経っていました。
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今日は本当に素晴らしいものを見せて頂きましたと合掌。
清々しい気持ち、また明日への活力を頂いてきました。
講堂を遠く後にしても何度も振り返り名残惜しくこの地を後にしました。

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山門工事⑥

しばらくぶりの更新となります。
ブログでの完成後の報告がだいぶ遅れていましたので、
GWこちらの別荘にいらした時にお客様ご夫妻が、 また現在進行中のウィ―クエンドhouseでお世話になっています 設計事務所イイヅカアトリエさんが足を運んで下さったりと、有難い事で山門の完成を楽しみにしてくれていた様です。

さて、最終回は 瓦工事の工程、そして完成までをご紹介します。

本来であれば瓦桟までが大工職の仕事ですが、
今回は細かい瓦桟割があるとの事でここから瓦職人へと引き継ぐ事となりました。
使用した瓦桟は耐久性のある樹脂のもの、ステンビスで留められています。
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瓦をサンダーで加工し、積み上げた時の曲線美を作りだします。
親方の技術を習得しようと弟子の熱い眼差しが注がれていました。

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天高く、甍の波の完成です。
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最後に倒壊した山門の中から奇跡的に原形をとどめ残った欄間「波間の龍」二枚、そしてこの地の繁栄と平和を見守って欲しいと願いを込めて棟札を収め、本工事完了となりました。
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山門工事⑤

さて、いよいよ明日から瓦工事が始まります。
今回は上棟から木工事完了までの報告となります。

先ずは垂木の取付け、
取付けに際し、木のクセ(反り具合)を見極め背と腹を交互に配していきます。
自然と生じる木材の反りと撓みの作用をバランス良く利用する事で、これからさき生じてくるであろう屋根の撓みを極力抑える事が出来るのではないかという考え方です。

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破風板→木負い→広小舞→登り、
屋根を形どるこれら部材の取付けで
ようやく山門らしいフォルムとなってきました。

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垂木の上には軒板が張られていきます。
この軒板は特注にて製材所で作ってもらった山門仕様。
地元・山武杉の赤身5.2m一枚板。

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軒板張りを終え、平母屋、野棟木を取り付けます。
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野垂木→野地板張り→ルーフィング張りと工程は進んでいきます。

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台風で倒壊してしまった以前の山門でしたが、
奇跡的に懸魚と鰭が無事であったこと、
そして以前の山門で何か再利用できるものがあれば使って欲しいという
ご住職のお考えもあり
これらを引き継ぐ事となりました。

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木工事が完了し、瓦工事を待つばかりとなりました。

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建築探訪

正月休みを利用して兵庫→京都→滋賀の三県を巡る旅に出ました。
初日は兵庫県小野市にあります「浄土寺・浄土堂」へ。
途中渋滞にはまりながら9時間をかけ、ようやく到着しました。

意外にも閑散とした境内。
御堂はいくつもの時代を見届けてきた堂々とした風格です。
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このお寺を開山された「重源上人」は僧侶として修行を積みながら、中国へ渡り仏寺建築を学ばれ建築技術についても習熟していたといいます。
S32 年一度改修工事が行われていますが、今日までの約800年もの間、風雪や幾度の地震にも耐えぬき創建当時のままの姿を残しているのです。
800年前の人達がこの御堂を一体どのようにして造ったのか、重源上人の建築にも興味が湧いてきます。
昨年、山門工事に入る前にこの御堂へ足を運びたいと考えていましたが今年に入ってようやくの実現です。
永い間、風雪に耐えしのんできた柱の表情は、苦労をしながら歳を重ね歩んできた深く刻まれた人のしわの様にも感じられました。

2日目は京都宇治市の「平等院」
007改修工事後、化粧直しをした鳳凰堂です。
庭園をぐるりと散策しながら、何処の角度から見ても絵になる建築です。
敷地内には近代的な建築の鳳翔館ミュージアムが併設されておりこちらもとても興味深く見学をさせてもらいました。新旧どちらの建築をも感じ取る事ができる場でした。

その後は京都を後にし滋賀県へ。
やってきたのは「佐川美術館」
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私の一番の目当てはこちらの敷地内に併設されている水盤に浮かぶこの茶室でしたが、この日は残念ながら閉館日。
ご覧の通り水盤の中にあり、周囲をぐるりとはいかず、またの機会に持ち越しです。

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山門工事④

本年もよろしくお願い致します。

さて新年明けて第一回「親方日記」は昨年末の山門上棟の報告からスタートです。

先ずは前日境内で下組みした構造物を山門の建つ場へ吊り上げ移動です。
台付け(ロープ)を回し固定した箇所に徐々に重みがかかりギシギシと音を 立てながら上へ上へと引き上げられていきます。
「どうか、どうか無事に、、、」と祈る気持ちで見守ります。033

山門の構造材の中でも重要な役割を担う檜の虹梁をおさめます。
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もう一方の脚ら構造物も境内を出て一旦すぐ脇の畑へと下ろし、ここから再度引上げられ基礎へ。
この時クレーンのゲージは1.8t、オペレーターの手腕が光りました。
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四脚門の脚が建ち上がりました。
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大斗・皿斗・巻斗・方斗・肘木など組物がおさめられます。
今回雲肘木は古建築から用いられている伝統あるものとしました。
これら小さな組物らも屋根の加重を受ける大きな役割を果たします。
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更に梁が組まれていきます。
104131144気にしていた天候ですが、ほぼ予報通りの15時半を過ぎたころからポツポツとやってきました。
暗くなるのも早く、丸桁(がぎょう)手挟み(たばさみ)等を残し、この日の工程を終了。

上棟の翌日には周囲に足場が組まれ、残る丸桁と手挟みがおさめられました。

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171177002013基礎との接合部分を除くこれまでの工程には接合金物類を一切使うことなく、全てクサビや丸や角の栓で構造材を組み上げています。
私の理想とする建築の原点であり、社名『木組』の由来でもあります。
また今回の山門には「構造材と組物で組み上げる貫工法の山門」をテーマに掲げ設計を行いました。

無事上棟を終えて、、、
関係各位の多大なるご協力とご尽力に助けられ無事上棟を迎えることができました事に感謝申し上げます。

ここでこれまでにご尽力頂いた御二方をご紹介します。

先ずは私とは25年来の付き合いとなる製材所社長。要望に叶う様なこれら材の調達、また原木からの製材に携わり、病と闘いすでに自力では立つ事すらできない体をおして自ら製材の陣頭指揮をとっていた姿がありました。
そしてもう御一方、
電力会社OBでもあり、自宅向かい隣家のご主人。
山門建設にあたり送電線の迂回が必要となり電力会社に掛け合って頂いた姿がありました。
「山門建てるんだよなぁ」と感慨深い面持ちで私に向けた言葉。
自身の命のリミットと山門の竣工とを推し量っていた様な言葉でした。

無念にも御二方に上棟を見届けてもらう事は叶いませんでした。
改めて御二方のご尽力に感謝した日でもありました。
この山門工事が私にとってなお一層思いの深いものとなりそうです。

 

 

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山門工事③

明日上棟の運びとなります。
前日の今日はお寺の境内にて下組みを行い、辺りにはカケヤの音が響き渡りました。

模型を作り、頭の中で組み立て方を考えてはいたものの、
いざ本番となってみると考えていた以上に難しい。
一度付けた物を外して、また付けたりと、、、一筋縄ではいかないものです。

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掛け声合せ皆の息を一つに、柱に貫を通します。

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長い事待たされていた材、いよいよ明日が出番です。


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山門工事②

加工作業は気のぬけない追い込みに入っています。
現在は四脚門の脚の部分 柱の加工中です。
写真手前の4本角は角のまま外側の四脚へ
また奥に写るは中脚を担う2本の柱、この材は角から丸へと加工していきます。

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002さて、中脚を担う柱を丸柱へと加工する工程。
柱の芯をだし差金を使って割り出していく方法です。
先ずは4角柱→8角→16角→32角→64角へと加工。

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8角柱→16角柱へ
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01816角柱→36角柱へ。028
62角となりました。

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そして最終的な仕上げには弧を型取った手製定規の出番となります。


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定規の柱に当たる部分には鉛筆の芯を擦り付けているため
角が取れていない箇所にはこの様に印が付くわけです。

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後はひたすら手鉋で丸に仕上げていく気の長い作業が続きます。
丸く加工された既製品もある中、やはりこの手は惜しみたくないのです。

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山門の中脚を担う2本の柱が並ぶ様。
出番はもうすぐです。

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