鯛の尾よりいわしの頭

日常生活の中ふとした時に「あの人はどうしているだろうか?」と思いを馳せるひと。
私にとってはそのうちの一人。
以前、仕事を共にした設計事務所の若者。
久しぶりに再開した私のブログを見てくれていた。
「親方、僕も楽しみにみていますよ」と電話をもらった。

「あんちゃん!鯛の尾よりイワシの頭だぞ!」
大工の修業時代に出会った長老の職人が私に云ったことわざ。

私もこの若者に「鯛の尾よりメザシの頭」という言葉を送った事があった。
幼い頃、メザシばかり食べさせられたお蔭でおかしな我流ことわざ。
この言葉が彼の心に大きくこだまし、現在は新たな場で活躍しているとの嬉しい報告でした。

50代半ば、若かった頃と比べ体力の衰えを嘆いてはいられない。
私にもまだまだやりたい事が山ほどある。

さて、こちらは「山ほどやりたいことがある、、」に関連する話。
市場で買い付けたヒノキの原木の製材に立ち会ってきた時の様子。

504

全長9mヒノキの原木。
曲がりのある原木だが、曲がった部分を切り落とせば柱に、またそのままの形状を生かせば梁として、という様に2通りに使う事が出来る。
このような曲がりのある原木は横にねかすと不安定な為、作業には大きな危険を伴い、要所要所に木をかませながら慎重に製材をしていきます。
製材所の社長とも25年程の付き合いとなり、私好みの材も熟知してくれている信頼のおける仲。
納得のいく材での家づくりには欠かせない人達です。

そして製材を終えたヒノキ材の到着。
548

先ずは、皮をはぎ、じっくりと自然乾燥させたいと考えている。
年々、良材が減少していく中これからどう確保していくか、、、
差し迫った大きな課題となってきている。

 

カテゴリー: 出来事 | コメントする

再開

いよいよ11月に入りました。
初日から雨のスタートです。

どこかキリの良い所で、、、と考えていましたが、
ようやくこのタイミングで久しぶりのブログ更新となりました。

ある夏の出来事。
「最近どうしたの?」と隣のご主人。
「???・・・」私(頭の中で考えを巡らす)
「ブログ更新ないけど、、、」隣のご主人。

常々どんな人が読んでくれているのか気になる所でしたが、
すぐお隣にも居たんですね。

さて、この間も「木組プロジェクト」は着々と進行しています。

秋晴れの吉日、上棟を迎えています。
勿論の事、手刻みによる加工です。

007

今回屋根の形状は寄棟。
ポイントは軒を薄く抑え、番傘を広げた様な素朴な屋根をイメージ。

028

こだわりはこの屋根一つに限らず、数々考えています。
それらは後々工事の進行状況と共にタネアカシとしましょう。

家づくりだけに留まることなく「ディテールを考え、創意工夫が詰まっている家」
木組の目指すところの家づくりです。

カテゴリー: 建築 | コメントする

大根の現場③

 完成を迎え、無事引渡しとなりました。

全て無垢材で誂えた家
柱は総ヒノキ、床は総栗材・天井は杉材、壁においては珪藻土仕上げ。

雨風に耐え厳しい自然界で何十年もかけ成長してきた材

長い長い年月をかけて自然界が作りあげた珪藻土

時間をかけ丁寧なまでの職人の繊細な手仕事

これらが合わさり、この住宅に重厚感が、更には住まう者には揺るぎない安心感がうまれるのではないでしょうか。

大根の現場、完成最終報告です。

玄関ホール
上がり板、上り框、ともにケヤキ材。

074

圧倒的な存在感
ケヤキ材の大黒柱

 

 

建具を誂える、、、

建具は空間を演出する上で、大きな役割を担っています。
桟の厚み・幅、取り入れ方などで良くも悪くも、
その空間が全く違うものに成り得る難しさをもっています。

今回、仏間の和室とダイニングとの間仕切り建具は障子としました。

天井高2.7mの障子建具ですから見上げる程の圧倒感はあるものの
桟の厚みを薄く抑え、空間が重くならない様
シンプルな感で仕上げています。

050

最終報告の終わりに、、、

現在、施主が住んでいる母屋は、45年前私の親父が建てたものです。
これからその母屋の取り壊しとなり、親父の残した手仕事がまた一つ消えてゆく寂しさもあります。
親父の後を継いだ私、そして職人の道を歩き出したばかりの倅、世代を受け継ぎ、こうしてまた仕事をさせて頂いた事の有難さ。
とても感慨深い現場となりました。

 

 

 

 

 

 

カテゴリー: 建築 | コメントする

本堂新築工事Ⅵ  

初夏の陽気が続いています。

さて、龍の寺本堂新築工事は内部造作を終え、外部回廊工事に入りました。
この日は内部壁の漆喰塗りの本仕上げ、また電気業者がエアコンの取付け、板金業者が雨樋の取付けに入っていました。

回廊の部材が積まれていますが、内部木工事は完了しています。
009

 

そして、外部、、、
周囲に回廊の部材が組まれていきます。
005

 

化粧直しをした屋根。
より一層の重厚感、存在感が生まれました。014

私は作業所にて破風板の下に取り付ける懸魚(げぎょ)の製作に取り掛かっております。

報告はまた改めまして。

 

カテゴリー: 建築 | コメントする

本堂新築工事Ⅴ

さて、前回では向拝建て方の様子を報告しましたが、

今回は屋根がかかるまでの工程を紹介します。
ここから屋根下地作業に移っていきます。

垂木、破風板が付き、より寺らしさが感じられる外観になってきました。

009①地垂木工事 007

②飛燕(ひえん)垂木工事

下段を地垂木、上段を飛燕垂木と云います。
上段の飛燕垂木を先端に向かって細く削り落としています。
今回はいつもより、より思い切った削りで私スタイルを表現しました。

こうする事で離れた場所から見るとスッキリとしたスマートな見立てとなり、
軒に軽快な印象を与えます。

043

③ 屋根が厚みを増し、徐々に恰好がついてきました。 084 096

④野地板張り106

⑤防水紙張り117

⑥屋根板金工事

019

023

屋根は寺全体のプロポーションにも大きく関わってきます。
蓑甲部分(端の膨らみを帯びた箇所)、また繋がりをもって丸く仕上げていく屋根の角(上写真)
においては職人の技量が問われる部分です。

打ち合わせを重ね、蓑甲部分は大げさになりすぎず、
私好みの柔らかなフォルムで仕上げてもらいました。

027

そして現在の外観
内部では造作作業、外部においては壁の漆喰塗りが進行している状況です。
内部工事経過はまた改めまして。
005

カテゴリー: 建築 | コメントする

本堂新築工事Ⅳ

久しぶりの更新となりました。 本堂新築工事 現場報告です。

既に工事は内部造作に入っておりますが、
過日の向拝建て方の様子を順を追って紹介します。

①ケヤキの向拝柱が建ちます。
009

②虹梁が組まれます。 012

③向拝柱の其々外側に木鼻が付きます。 026

④お堂と向拝柱とを繋ぐ海老虹梁を取付けます。
040

⑤皿斗、大斗、肘木、方斗、巻斗組物を順に組み上げていきます。 047
059

⑥蟇股の取付け
龍一匹の彫刻が一般的ですが、
お寺の名に『龍』と付く事、また施主の『龍』への並々ならぬ思いがあるとお見受けし、
今回は龍の親子『子引き龍』を彫っています。
055

⑦向拝屋根を支える丸桁(がぎょう)が組まれます。
『子引き龍』に損傷を与えない様、皆の息を一つに合わせ、
この日一番の緊張所です。
044
039

⑧丸桁(がぎょう)の上には手挟み(たばさみ)を組みます。
056

どの材においても二つと代わりのないものばかり。
作業所へ戻って作り直しと云った訳にはいかないのです。

手間を惜しまず部材の一つ一つを手作業で加工し、
ここまでに要した長い長い時間を考えると要所要所緊張が走りました。

本来の支割から考えていくと、向拝の各々の部材の大きさは2割増での大きさになっています。
そこには私なりの考えがあります。

黒潮流れる壮大な太平洋の傍に構えるこの寺。
太平洋を臨む様、建てられています。
そこで威風堂々とした佇まいを表現できたらと考えました。

また、東南からの雨風が強く吹き付けるこの地において、
建物を出来るだけ長く持たせるには、
材にある程度以上のボリュームをもたせる必要があると考えます。

さて、この日の作業はここまでとなりました。
次回は屋根下地工事からお伝えします。

077

カテゴリー: 建築 | コメントする

大根の現場②

木工事も終盤を迎えており、外壁張り及び下駄箱製作を残す所となりました。
現在は左官工事も同時に進行しており、この家の粗方八割程度の壁が珪藻土塗りとなります。
建材を一切使用しておらず、施主の無垢材への妥協なきこだわりが結集した建物となっています。
写真を通しても本物の素材、また無垢材でこしらえた重厚感が伝わるのではないでしょうか。
その数々を紹介します。

先ず、和室。
秋田杉の赤身、洗い出し。天井は格式高い竿縁天井となっています。

竿はこの様に3分6分(さぶろく)面仕上げとなっております。
和室本来の繊細な部分でもあり、風格が増します。
近年ではこの竿縁天井を目にする機会が、だいぶ少なくなりました。

仏壇はケヤキづくり。
2枚の戸板も1枚のケヤキ材から取っていますので木目を生かし、戸板正面に取っ手は付けずにあえてシンプルに。
須弥壇は「木組」オリジナル。
代々のご先祖様を祀る厳かな場所、我々は手を惜しみません。
その一方、細かさゆえ左官職人泣かせかもしれません。(左官は下地塗り)

 

この家の大黒柱、360角(尺2寸)のケヤキの赤身材。
家の仕上がり具合と同じくして大黒柱としての風格も増しているように見えます。

上のダイニングと仏壇の間とは二間合わせて24帖、天井高も2,7mと、正しく大空間を味わえます。
間仕切りには5本引きの障子が入り、間仕切り障子はもちろん壁引き込みに。
押入れ及びクローゼット内は杉板張りに。
このあたりは、いつもの「木組スタイル」と云った所です。

私自らの目で吟味し、良しとして買い付けたこれらの材ですが、その後また施主の厳しい目が光ります。
その他、TV台、キッチンカウンター、玄関下駄箱、家中あらゆる台という台にはヒノキの一枚板が使われています。
こちらの報告はまた改めまして。

カテゴリー: 建築 | コメントする

作業所では今、、、③

ここ1ヶ月間、向拝建て方に向けて、細かな手作業が続いています。

全て欅の塊から切り出す作業から始まり、 組み立てる部材一つ一つを丁寧な手作業で作っていきます。
根気と何より熟練した技を必要とします。

下の写真は巻斗と方斗を作る工程。

巻斗、方斗、完成。
この曲線は「丸鉋」を使い一つ一つ手作業で仕上げていきます。
「丸鉋」とは
一般的な鉋とは違い、局面が丸みを帯びて出来ています。

大斗を作る工程。
こちらの欅材は樹齢300年以上、岐阜産のもの。
見るからに頑固で硬い木質。
刃物をあててもその木質は見た目の通りです。

大斗の完成。
先に紹介した巻斗や方斗と形は同じですが、大斗の方が大きいものとなります。

こちらは皿斗を作る工程。

皿斗の完成。
欅の木目がきれいです。
磨けば輝く。
木も宝石と似ています。

向拝ではこの様に皿斗の上に大斗が組まれていきます。

虹梁、海老虹梁、蟇股、手挟み、木鼻、雲肘木等々の彫刻も仕上がってきており、 接続箇所との取り合いも終えています。


向拝柱の加工も終え、 これらの部材が組み上がるのも間もなくとなります。

 

 

 

 

 

 

 

カテゴリー: 建築 | コメントする

本堂新築工事Ⅲ

本堂新築工事現場報告です。

現在は木工事と共に屋根工事が進行しています。
本来ならば銅板葺きとなるところでしょうが、今回は海が真近にある為ステンレス葺きの屋根となります。

原寸図作業から悩み貫いた屋根の曲線が姿を現しました。
自己の満足に留まらず、やはり誰が見ても「きれいな屋根だ」と感じてもらえるような曲線を描きたいと強く思うのです。
離れて眺めて、近くへ行ってまた眺めて、角度を変えまた眺めて、、、

葺き地(写真下・緑色ステンレス部分)は本来ならもっと厚くボリュームのあるものなのですが、この寺全体とのバランスや軒先をスッキリとさせたいと考え、葺き地の厚みを10㎝ほどに抑えています。

屋根みの甲下地。
社寺建築には一般住宅に比べ細かな工程が数多くあります。これら多くの部材を現場で使用できるまでには作業所での加工に多くの時間を必要とします。
現場のみが表だった職人の仕事だと思われがちですが、こうした部材を作業所で加工するという裏方の仕事も担っているのです。

カテゴリー: 建築 | コメントする

作業所では今、、、②

一昨日、職業体験が行われ地元小学生6名がやってきました。
行う内容としては毎年そう変わりはありませんが、ちょうど寺の材を加工している様子や一般住宅とは桁外れた寺用の太い柱材を見る事が出来たりと子供達にとっては幸運だったのではないでしょうか。
体験を終えると内2名の子供が「社長さん、日曜日も来ていいですか?電話番号を教えてください。」と近寄ってきた。
ほんの1時間半という短い時間では満足いかなかったのだろう。
思いがけない子供達の反応に嬉しさと笑いが込み上げてきました。

さて、もう一方、、、
向拝虹梁と海老虹梁共に仕上がり、この材に彫刻を施す工程へ。
木鼻・蟇股のケヤキ材と一緒に彫刻工房へ材を運び、打ち合わせを済ませてきました。


休む間もなく、向拝柱を仕上げる作業へ入ります。

この太いケヤキ向拝柱を下で受け支えるのはこちらの礎盤。
静かに出番を待っています。

カテゴリー: 出来事 | コメントする