4月より新人が入った。
建築の専門学校へ2年間通いこの春卒業したばかりの20歳。
私にはやって来た時から少々気に入らない事があった。
茶髪に長髪。
世間一般的な若者のスタイルなのだろうが、この職場にはふさわしくない。
鋸ひとつ引くにも邪魔になるだろうに。
「そのうち自分から小ざっぱりしてくるだろう、初っ端からあまりうるさい事を言っても」と思い言葉をのんだ。
2週間程経った頃
「頭刈ってこい!」と言った。
「頭にデキモノが出来ているので。。。」と返事が返ってきた。
3週間ほど経った頃
「頭刈ってこい!」と言った。
「給料日が来たら行きます」と返事が返ってきた。
しかしながら、当に給料日は過ぎ、連休もあったにもかかわらず、とうとう頭はそのまま。
私は自宅からバリカンを持ち出した。
「五厘か?五分か?」と聞いた。
「五分でお願いします」と観念したか潔い返事が返ってきた。
さっぱりしたらキリっとしたイイ男になった。
身だしなみを整える=物を教わる側の『心構え』の一つではないだろうか。
若い頃世話になった棟梁が言っていた言葉。
「人に物を教わるのに他人の二度聞きはないんだぞ!上っ面で聞くな!」と。
私は今でものこの言葉が忘れられない。